エステサロンを開業・経営する際には、施術メニューの作成や立地、集客などに目が向きがちですが、見落とせないのが「リスクへの備え」です。トラブルが起きたときの損失を最小限に抑えるには、事前の保険選びがカギとなります。

本記事では、エステサロンにおける保険の重要性や主な種類、選び方などを詳しく解説します。

エステサロンにおける保険の重要性とは?


エステサロンでは、施術中の事故や顧客の持ち物への損害、スタッフのケガや病気、店舗の火災や災害など、さまざまなリスクが想定されます。こうした事態に備えるためには、保険への加入が不可欠です。適切な保険を選ぶことで、万が一のトラブルにも備えられ、安心してサロンを経営することができます。

エステサロンで起こりうる主なトラブル


エステサロンの経営には、さまざまなリスクが伴います。ひとたびトラブルが発生すると、顧客の信頼を失ったり、営業に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。

ここでは、エステサロンで起こりうる主なトラブルを紹介します。

施術中の事故

施術中の事故は、エステサロンにおける代表的なトラブルの一つです。たとえば、脱毛や痩身機器の温度設定ミスによるやけど、化粧品や薬剤によるアレルギー反応、誤った手技による捻挫・骨折などが挙げられます。

また、施術中に顧客が転倒したり、器具と接触してケガをしたりするケースもあり、予期せぬトラブルにつながる恐れがあります。

物販によるトラブル

物販によるトラブルも、エステサロンで注意すべきリスクといえます。販売した化粧品や健康食品、美容機器などが原因で肌荒れや体調不良、ケガが生じる可能性があるからです。

代表的なものとして、成分の説明が不十分でアレルギーを引き起こすケースや、美容機器の使用によってやけどが発生するケースなどが挙げられます。

設備トラブル

水漏れや電気系統の不具合、エアコンの故障など、設備トラブルはサロンの営業に大きく影響を及ぼすことがあります。

また、施術機器の漏電や誤作動による火災や、施術に使用したオイルやクリームで床が滑り顧客が転倒するなど、設備の管理不足が原因で思わぬアクシデントにつながるケースも存在します。

盗難・破損

エステサロンにおける盗難・破損とは、預かった荷物が盗まれたり、紛失・汚損したりすることで、顧客に損失が生じるトラブルを指します。

場合によっては信用問題に発展するリスクや、賠償責任を負うリスクがあります。

法律違反のリスク

医療行為とみなされるような施術や表現を行った場合、法的な処罰や営業停止処分の対象となる可能性があります。

また、広告内容や契約方法にも配慮が求められます。効果を誇張した表現や顧客を誤解させる内容は、薬機法や景品表示法、特定商取引法違反とみなされる恐れがあるため注意が必要です。

エステサロンに必要な保険の種類


エステサロンを安定的に経営していくためには、不測の事故やトラブルに備えた保険の加入が欠かせません。施術中のケガや設備の損壊、顧客の荷物の紛失、営業停止など、さまざまなリスクに対応する必要があります。

エステサロンにおすすめの主な保険は以下の通りです。

施設賠償責任保険

施設賠償責任保険は、エステサロンの施術や設備が原因で顧客や第三者に損害を与えた場合に、賠償責任を補償する保険です。

施ミスや設備の不具合によるケガ、預かった荷物の破損など、契約で定められた施設内外で発生したトラブルが主な対象となります。

受託者賠償責任保険

受託者賠償責任保険は、エステサロンがお客様から一時的に預かった荷物が破損・紛失・盗難などの被害を受けた場合に、賠償責任を補償する保険です。

施術中にバッグや貴重品、衣類などを預かることが多いサロンでは、思わぬトラブルに備えておく必要があります。保険会社によって保障範囲が異なるため、事前に内容を確認したうえで加入することが大切です。

生産物賠償責任保険(PL保険)

生産物賠償責任保険(PL保険)は、エステサロンが販売した化粧品や美容機器などが原因で、顧客に肌トラブルやケガなどの損害を与えた場合に、賠償責任を補償する保険です。

販売品による事故だけでなく、施術に関連したトラブルも対象となることがあり、リスク管理として備えておきたい重要な保険の一つです。

火災保険・地震保険

火災保険・地震保険は、エステサロンの建物や設備を守るうえで大切な保険です。火災や風災、水害などによる損害は火災保険で補償され、地震による損害は火災保険に地震危険補償特約を付けるか、地震保険をセットで契約することで対応できます。

自宅の一室をサロンとして使用する場合は、別途サロン用の保険に加入することも検討しておくとよいでしょう。自宅の火災保険や賠償責任保険では、サロンの経営で発生した事故やトラブルを十分にカバーできないことがあり、専用の保険に加入することで、より幅広いリスクに備えることが可能になります。

休業補償保険

休業補償保険は、火災や水漏れなどのトラブルによって営業ができなくなった際に、休業期間中の損失を補償する保険です。売上減少をカバーし、店舗の修繕費や再開準備の支援にも活用できます。

事業活動総合保険の特約として付帯されることが多く、サロン経営の安定を支えてくれる保険の一つです。

傷害保険

傷害保険は、施術中やサロン内で発生した事故によって顧客が負ったケガに対し、身体的損害を補償する保険です。マッサージ中の転倒や、機器の誤操作によるやけどなど、思いがけないトラブルにも対応できます。

手厚い補償体制を整えることで、万が一の際も迅速な対応をとることが可能です。

保険選びのポイントとは?


エステサロン向けの保険にはいろいろな種類があり、どれを選ぶかによってリスクへの備え方も変わります。補償の内容や保険料、保険会社の対応力などを総合的に判断することが大切です。

保険選びで押さえておきたい主なポイントは次の通りです。

サロンの規模やメニュー内容に合った保険を選ぶ

エステサロンの保険を選ぶ際は、サロンの規模や提供するサービス内容を考慮することが重要です。個人経営か、スタッフを抱えているか、施術の種類は何かといった条件よって、想定されるリスクや必要な補償は異なります。

サロンの経営スタイルや特徴に合った保険を選ぶことで、過不足のないリスク対策が実現できます。

補償内容と保険料のバランスを考える

補償内容と保険料のバランスが適切かどうかを見極めることも、エステサロンの保険選びには大切なポイントです。保険料が安くても補償が薄ければ十分な備えとはいえず、反対に保険料が高くても実際の経営に見合わない内容では負担ばかりが大きくなってしまいます。

「想定されるリスクに対して必要な範囲をカバーできるか」という点を基準に検討するとよいでしょう。

信頼できる保険会社かどうかをチェックする

トラブルが発生したときに適切な対応を受けるためには、保険会社の信頼性も重要です。対応の早さや丁寧さ、実績、評判、カスタマーサポートの体制などを事前にチェックしておきましょう。

エステサロンの経営に詳しい担当者がいる保険会社であれば、相談しながら適切な補償を選ぶことができます。

エステサロンの経営にはリスクに備えた保険選びが大切

エステサロンの経営には、施術中のトラブルや設備の不具合、物販によるケガや体調不良など、さまざまなリスクが伴います。こうした事態に備えて保険に加入しておくことは、損害の拡大を防ぎ、事業の安定性を高めるうえで必要不可欠です。

サロンに合った保険を選び、安心・安全な経営環境を目指しましょう。