エステサロンの集客力を上げるために、広告は非常に有効なツールです。マスメディア広告以外にもWeb広告の普及率も年々高まっており、予算が限られている小規模なエステサロンでも広告を活用しやすくなっています。

ただ、広告を出稿する際に覚えておかなければいけないのは、法律によって規制されている表現があるということです。知らずに違反してしまっても罰則の対象になるため、今回のコラムではエステサロンの広告を規制する法律や、使用できない表現について解説していきます。

エステサロンと医療クリニックの違い

広告を規制する法律について解説する前に、まず理解していただきたいことは、エステサロンと医療クリニックでは使用できる表現が全く異なるということです。

  • 医療行為
  • 医療機器の使用
  • 医薬品の提供

医療クリニックとは違い、美容エステでは上記のようなことができません。実際に提供できるサービスが制限されることに伴い、広告に使用できる表現の幅も縮小されてしまいます。

そのため、日頃よく見かける表現であっても、エステサロンでは使用できない広告表現というケースがよくあります。

サロン広告を規制する法律

サロン広告を規制する法律には以下の3種類があります。

  • 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
  • (不当景品類及び不当表示防止法)景品表示法
  • 医師法

それぞれの法律によって異なる規制が定められていますが、違反すると罰則が与えられる場合もあります。健全な広告を出稿するために、禁止されている表現を把握し、適切な文言を使用しましょう。

薬機法

薬機法は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が正式名称です。名称の通り、医薬品や医療機器に関する法律であり、医薬品や医療機器以外の商品や、それを使用するサービスの広告を規制しています。

具体的には以下のような表現が禁止されています。

  • 医薬品・医療機器に準ずる表現
  • 専門家の権威を借りる表現
  • 確証を得られない数値を用いた表現

それぞれの表現について詳しく解説していきます。

医薬品・医療機器に準ずる表現

本来、身体に医学的な変化や影響を与えるサービスを提供することは、医療機関しか許可されていません。例えば、以下のような表現はエステサロンの広告で使用することはできません。

  • 肌荒れを治す
  • アンチエイジング
  • シミやくすみを消す

反対に、エステサロンの広告で使用できるのは以下のような表現です。

  • 肌荒れを防ぐ
  • エイジングケア
  • シミやくすみを防止する

前者との違いは、「変化を与える」のではなく、「変化を防ぐ」ことを意味する表現であることです。上記はあくまでも一例でしかありませんが、エステサロンでも使用できる表現かどうかを見分ける際、基本的にはこのような点に着目しましょう。

ただし、どのように作用するかによっても異なるため、一概には言えません。曖昧な部分もあるため、万全を期す場合には、広告を出稿する前に専門家に相談することをおすすめします。

専門家の権威を借りる表現

  • 医師監修
  • ○○大学と共同研究
  • プロの美容師おすすめ

このような表現はもともとグレーゾーンに入る表現であったため、黙認されているケースも多く、普段生活している中でも頻繁に見かけます。

しかし、平成30年に厚生労働省から広告に関する通達が発表され、規制が厳しくなりました。いまだに見かけることもありますが、違反広告に該当してしまう可能性が高いため、現在は使用を控えるべきだと言えます。

確証を得られない数値を用いた表現

  • 2週間で体重がマイナス5kg
  • たった5分で小顔が手に入る

このように具体的な数値を用いると、広告の説得力が増し、サービスや商品をより魅力的に思ってもらえるでしょう。ただ、実際の効果には少なからず個人差があり、その数値ほどの効果を得られない場合も考えられます。

そのため、効果を実証できるデータや記述がなければ、具体的な数値を用いた表現を使用することは禁止されています。

景品表示法


景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。エステサロンに限らず、あらゆる業種を対象とする法律であり、主にサービスや商品の誇張や虚偽を禁止しています。

以下の3種類の表現が規制されていることを押さえておきましょう。

  • 優良誤認表示
  • 有利誤認表示
  • 根拠のないビフォーアフター写真

優良誤認表示

優良誤認表示とは、宣伝するサービスや商品を実際のものより優れているように思わせる表現のことです。具体的には、以下のような最上級の表現の使用が禁止されてます。

  • 業界No.1
  • 当サロンだけ
  • 満足度100%
  • 日本初

仮に事実と相違ない内容だとしても、広告として使用するには実証するデータや数値が必要です。例えばアンケートを実施し、その調査規模や結果などを明記することが望ましいです。

有利誤認表示

事実より有利、あるいはお得だと勘違いさせてしまう表現を有利誤認表示と言います。

  • 今だけ半額キャンペーン!
  • 初回限定5000円

例えばこのような表現が当てはまりますが、理由は比較対象となる2回目以降の料金が表記されていないからです。期間限定のキャンペーンや初回価格などを訴求する場合は、通常料金をきちんと明記し、ユーザーに必要な情報を漏れなく伝える広告である必要があります。

根拠のないビフォーアフター写真

施術前後のビフォーアフター写真を掲載することも、エステサロンの広告としてはよくある手法です。掲載自体が禁止されているわけではありませんが、あくまで効果には個人差があるため、この場合も根拠となるデータが求められます。

例えば痩身エステの場合、施術回数や期間などの情報を正確に明記しなければいけません。また、エステだけで効果があると思わせる表現も禁止されているため、期間中に行った運動や食事制限などの情報も必要であり、写真の加工も禁止されています。

医師法

医師法は、医師の免許や医療行為に関する法律で、医師以外の医療行為を禁じています。既に解説した通り、エステサロンで提供できる痩身エステや脱毛のような施術は、医療行為に該当しません。薬機法に共通する部分もありますが、医療行為を想起させる、あるいは医療行為だと誤認させる可能性がある表現が規制の対象になります。

医療行為に準ずる表現

  • 治療する
  • 改善する
  • 解消する
  • 矯正する
  • 診断する

これらの断定的な表現は、医師による医療行為でしか使用が認められていません。他には脱毛の場合、永久脱毛も医療行為に該当するため、脱毛サロンの広告で使用することは禁止されています。

  • 保護する
  • 緩和する
  • 防止する
  • 補助する
  • ハリやツヤを与える

薬機法と同様、このような変化を抑制する、あるいは程度が強くない表現であれば、エステサロンでも使用することができます。近年は「小顔矯正」や「永久脱毛」といった表現を使用したことで摘発されるケースが増えているため、違反していないか十分注意しましょう。

サロン規制の法律に違反してしまったら?


最後に万が一法律に違反する広告を出稿してしまった際の罰則などについて解説します。

薬機法

薬機法に違反してしまった場合は、まず行政の調査が入ります。調査の結果に合わせて指導が行われ、逮捕されてしまう可能性もあります。

もともとは2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金が科せられていましたが、2021年8月の改正によって課徴金制度が導入されました。違反行為をしていた期間の対象商品やサービスの売上金額の4.5%を納付しなければいけません。

景品表示法

景品表示法に違反した場合は、消費者庁から通知が届き、調査及び指導が行われます。必要に応じて広告の修正や停止などの措置命令が下され、応じなかった場合は、2年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられます。また、薬機法と同様に課徴金が科せられますが、景品表示法の場合は売上の3%を納付することになります。

医師法

医師法に違反し、ユーザーに医師や医療行為だと誤認された場合は、50万以下の罰金が科せられます。さらに医師免許を所有していないにも関わらず医療行為をしたり、医師であると偽った場合には3年以下の懲役、200万円以下の罰金が科せられます。

ガイドラインを守ってサロンを宣伝しよう

今回のコラムでは

  • 薬機法
  • 景品表示法
  • 医師法

という三つの法律について解説しました。いずれの法律も違反すると厳しい罰則がありますが、使用の可不可が曖昧な部分もあります。

不安な場合は専門家や各機関に相談することも有効ですが、必ず遵守しなければいけないのは、事実と異なる情報を記載しないということです。今回解説した禁止表現に気を付けつつ、魅力的な広告表現を考えていきましょう。