約2万人の就業者がいるエステ業界。エステティシャンになるためには特に資格も必要ないため、開業のハードルは比較的低い業界だと言えます。

一方、売上を伸ばすためには高い技術力や接客力が求められ、「スタッフの人材育成」を欠かすことができません。人の手で施術をするからこそ、全スタッフが確かな技術を身に付け、お客様に喜ばれる接客をする必要があります。

本記事では、エステサロンにおける人材育成のポイントや方法についてご紹介します。現在サロン経営をしている方や、検討中の方はぜひ参考にしてください。

人材育成の目的

人材育成とは、「企業が求める人物像に成長させ、企業発展に貢献できる人材へ育てること」です。個々のスキルの向上はもちろん、企業全体の成長に繋げることが目的です。

生産性の向上

企業が成長するためには、社員一人ひとりの成長が必須条件です。特定の優秀な人材ばかりに仕事を任せたりと、業務が偏ることは好ましくありません。個々の生産性を上げることで、組織の動きを活発にすることができます。

組織力の強化

人材育成は、個人だけでなく組織としての力を強めるためにも重要です。どんなに生産性の高いメンバーが揃っていても、チームワークが悪いと企業は発展しづらくなります。

離職率の低下

昨今では「終身雇用」という概念が薄れ、経験やスキルを積んだら次のステップへ進むということも少なくありません。優秀な人材を逃すことは企業にとっても損失であり、新たな人材の確保にもコストがかかります。

社員一人ひとりに即した人材育成をし、社内でキャリアップできる体制を整えることが大切です。

人材育成をする上で大事なこと

目標や方針を共有する

目標や運営方針は従業員にも共有することが大切です。指導を受ける目的やゴールが把握できていないと、終始受け身の姿勢になってしまいます。企業の発展に貢献できる人材にするためには、各々が目標を意識して取り組むことが大切です。

レベル別に行う

全ての社員にとって最適な人材育成方法はありません。社員のレベルによって求められる能力は異なるため、それぞれに即した方法を確立させましょう。

企業が目指す理想像から逆算する

一般的に効果があるとされている方法でも、全ての企業に当てはまるわけではありません。企業が目指す理想像や、社員に求める人物像から逆算して考えるようにしましょう。

エステ業界で人材育成が必要な理由

技術力の向上

企業を経営する上で、人材は非常に重要な資産です。特にエステ業界は手で行う施術が多いため、人材なくして成り立たない業界だと言えます。サロン経営を円滑に進める上で、エステティシャンの技術力を底上げすることは必要不可欠です。

集客力の向上

店舗数が増え続けている美容業界は年々競争率が高まっており、集客力を上げなければ経営難に追い込まれてしまいます。近年は口コミの評価も重視される傾向にあるため、その点でもスタッフの技術力が欠かせません。サロンの雰囲気の良さも大事な要素なので、スタッフ間のコミュニケーションを円滑にするためにも人材教育が必要と言えます。

離職率の低下

美容業界は離職率が高く、以下のような理由から他のサロンに転職するエステティシャンも多いです。

  • 業務がつらい
  • 給与が低い
  • 残業が多い

他にも、「別のお店に行った方が成長できるのではないか」と感じて退職するケースも少なくありません。長く在籍してもらい、余計な採用コストをかけないためにも、人材育成は大切です。

エステサロンのスタッフに求められる力

ここからは、エステサロンで働く上で必要な力を、役職別にご紹介します。

エステティシャンに求められる力

相手の立場になって考える力

顧客満足度を高めるためには、お客様が「どんな言葉をかけられたら嬉しくて、どんな施術をしたら喜ぶのか」ということを考えられなければなりません。美容に興味があってエステティシャンを志望する人は多いですが、常にお客様のことを1番に考えることが求められます。

美容への意識の高さ

エステサロンは美意識の高いお客様が多いため、エステティシャンも常に美容に気を遣う必要があります。「この人の施術を受けて大丈夫だろうか」という不安を抱かれないためにも、自分自身が綺麗でいようとする姿勢が大切です。美容のトレンドは日々変化するため、最新の美容事情を追うことで、お客様との会話にも取り入れることができます。

経営者やマネージャーに必要な力

集客力

美容業界は競合が多く、中でもエステサロンの店舗数は年々増加しています。近年はWeb上での集客が大部分を占めるため、サイトやブログ、SNSなどを最大限に活用し、新規顧客の獲得に務める必要があります。そのために、Webマーケティングやブランディング等に関する知識を身に付け、実際の集客に応用することが大切です。

雰囲気の良いサロン作り

スタッフの定着率と顧客満足度を高めるためには、サロンの雰囲気作りが欠かせません。定着率に関して、給与や残業面などで苦しむ部分があるかもしれませんが、スタッフに長く働いてもらうための努力は必要不可欠です。

また、お客様は入店時や施術中に店内の雰囲気を敏感に感じ取ります。スタッフ内のコミュニケーションが円滑に取れていなかったり、少しでも嫌な空気が感じられた場合、リピート率に影響が出る恐れもあります。

今後も通いたいと思ってもらうために、居心地良く感じられる雰囲気作りを心がけましょう。

人材育成の方法紹介

セミナー

セミナーには様々な種類がありますが、社団法人日本エステティック経営者会が開催しているセミナーがおすすめです。皮膚科医や弁護士などが、医学知識・法律知識・ホスピタリティについて指導します。エステティシャン向けと教育担当者向けに分かれているので、それぞれに合ったセミナーの受講が可能です。

メリット

  • 講師の質が高い
  • 自分に合った指導を受けられる

デメリット

  • 一般社団法人日本エステティック協会の会員になる必要がある
  • 有料セミナーが多い

OJT

OJTとは「On the Job Training」の頭文字を取った言葉で、職場での実務を通じて知識やスキルを身に付けることです。主に先輩社員が各新入社員に付きながら指導します。

メリット

  • 研修が終わってからすぐに実務に入ることができる
  • 個々のペースに合わせて進めることができる

デメリット

  • 習熟度に偏りが出る
  • 指導をする側と受ける側双方に負担がかかる

OFF-JT

OFF-JTとは「Off the Job Training」を略した言葉で、業務時間外で一か所に集まり、セミナー形式で研修を受けることです。基本的には先輩社員や上司が指導をしますが、職種によっては外部講師を招く場合もあります。

メリット

  • 大人数をまとめて指導できる
  • 研修の質にムラがない

デメリット

  • 一人ひとりに適した内容ではない可能性がある
  • 会場を借りたり講師を招くためのコストがかかる
  • 実務に応用できるまでに時間がかかる

エステ業界の人材育成で重要なこと

新任エステティシャンで重要なこと

新任のエステティシャンには基本的な施術方法やホスピタリティなどを指導しますが、最も大事なことは「エステティシャンとしての仕事の面白さを伝えること」です。

誰でも最初は辛いことの方が多く、特に美容業界は離職率が高いという事実があります。しかし、自分の施術でお客様が喜んでくれることのやりがいを経験すれば、仕事に対するモチベーションの向上にも繋がります。

ベテランエステティシャンで重要なこと

経験豊富なベテランエステティシャンの場合は施術に慣れているため、普段の施術で手を抜いてしまう可能性があります。それぞれにノルマを課して向上心を持たせたり、後輩の指導を任せたりすることが重要です。

また、一人ひとりと今後の運営方針やキャリアに関する話をすることで、モチベーションの向上に繋がります。エステティシャンは幅広い美容知識を知っておく必要があるため、最新トレンドを含めた情報共有などを行うことも重要です。

お客様に好かれる優秀な人材を育てよう

エステサロンの競争率は徐々に高まってきていますが、施術の単価が高いため、軌道に乗れば高い利益を期待できます。運営を円滑に進めていく上で重要なのが、エステティシャンの技術力の底上げと集客力です。今回ご紹介した人材育成の方法を参考に、お客様から支持される人気サロンを目指しましょう!