「通っていた脱毛サロンが突然閉店した」「破産したらしいが、ローンの支払いはどうなるのか」という不安を感じている方は、決して少なくありません。近年、脱毛サロンや医療脱毛クリニックの倒産が相次いでおり、コース契約やローンを利用していた消費者が返金を受けられないまま困惑するケースが急増しています。
本記事では、脱毛サロンが破産した場合にローンや未施術分の代金がどうなるのかを、支払い方法ごとに詳しく解説します。さらに、万が一のときに備えた具体的な手続きの流れと、こうした被害を未然に防ぐためのポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次脱毛サロンの破産・倒産が相次ぐ背景

脱毛の需要は年々拡大し、サロンや医療クリニックの数は一時期に比べて大幅に増加しました。しかし、その一方で倒産する脱毛サロンも増加しています。帝国データバンクの調査によると、2024年度における脱毛業界の倒産件数は18件にのぼり、前年度(8件)から倍増して過去最多を更新しました。さらに2025年1〜7月の倒産件数はすでに12件に達しており、前年同期(4件)比で3倍増というペースで急増しています。
(出典:帝国データバンク「脱毛業界、赤字経営が4割超 24年度の倒産は過去最多」 )。
なぜこれほど倒産が続くのか、その背景にはいくつかの構造的な問題があります。まずは業界特有の仕組みから理解していきましょう。
広告費の高騰と前払いコース契約の構造
脱毛サロンの経営において、新規顧客の獲得にかかる広告宣伝費は年々増大しています。SNS広告や検索連動型広告の単価上昇により、一人の顧客を獲得するコストが膨らみ、事業収支を圧迫するケースが増えています。
こうしたコスト増を補うために多くのサロンが採用してきたのが、「複数回コースの前払い制」です。施術を行う前に数十万円規模の代金を一括または信販ローンで受け取る仕組みは、サロン側にとってはキャッシュフローの安定策ですが、倒産した際に消費者の未施術分の代金が戻ってこないという深刻なリスクをはらんでいます。
広告への過剰投資と前払い依存の構造が合わさることで、経営が行き詰まるサイクルに陥りやすい業界構造となっているのです。
消費者被害は深刻な水準に
倒産件数の増加に伴い、消費者被害も急拡大しています。国民生活センターのデータによると、美容医療サービスに関する相談件数は2022年度3,798件から2023年度6,281件、2024年度には10,717件と急増しており、特に脱毛関連のトラブルが増加の大きな要因とされています。
(出典:国民生活センター「美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)」 https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/biyo.html)。
また帝国データバンクは、過去2年間で少なくとも推計延べ30万人の利用者が倒産による被害を受けたと発表しています。こうした被害の多くは、支払い方法や契約内容についての理解不足から生じています。
脱毛サロンが破産したときにローンはどうなるのか
脱毛サロンが倒産したというニュースを聞いて、真っ先に頭をよぎるのは「ローンの支払いをすぐに止められるのか」という点ではないでしょうか。結論から言えば、サロンが倒産しても、ローンや分割払いが自動的に止まることはありません。支払いを止めるためには、利用者自身が適切な手続きを取る必要があります。
しかし、すべての支払い方法で対応策がないわけではありません。支払い方法ごとに状況と対策が異なるため、まず自分の契約がどのケースに当たるかを確認することが重要です。
ローンは倒産しても自動的に止まらない
脱毛サロンと締結した施術契約と、クレジット会社や信販会社との立替払い契約は、法律上は別々の契約として扱われます。そのため、サロンが倒産して施術が受けられない状態になっても、クレジット会社や信販会社への支払い義務は原則として継続します。知らずに放置すると延滞・滞納の扱いとなり、信用情報に傷がつく可能性もあるため、早急な対応が必要です。
支払い方法によって対応が異なる
脱毛サロンが倒産した場合の対応は支払い方法によって異なります。それぞれ詳しく解説します。
クレジットカード翌月一括払いの場合
クレジットカードの翌月一括払いで代金を支払っていた場合、カード会社がサロンに対してすでに立替払いを行っている状態です。この場合、割賦販売法に基づく「支払停止の抗弁」を利用できる可能性があります。カード会社に対して「サービスが履行されなくなった」という事実を書面で申し出ることで、未払い分の請求をストップするよう求めることができます。しかし、すでに決済が完了している分については返金を受けるのが難しいこともあります。
分割払い(信販ローン)の場合
信販会社との分割払い契約(ショッピングクレジット)を利用していた場合は、条件を満たせば比較的有効な手段が存在します。割賦販売法第30条の4に規定された「支払停止の抗弁」の対象となるのは、支払い期間が2か月を超え、かつ割賦販売価格が4万円以上の契約です。
このケースでは、信販会社に「倒産によりサービスが受けられなくなった」旨を申し出ることで、残りの支払いを停止できる可能性があります。
現金一括払いの場合
現金で一括払いをしていた場合が最も厳しい状況です。倒産したサロンへ直接返金を求めることは実質的に困難であり、破産管財人を通じた清算配当を待つことになります。
しかし、破産手続きでは優先的な支払いが先行するため、一般債権者への配当はほとんどないケースも多く、未施術分の代金が戻ってくる可能性は非常に低いのが現実です。
破産時の返金を受けるための手順

脱毛サロンの破産を知ったとき、焦りから誤った対応をしてしまうと後悔につながることがあります。冷静に、適切な順序で手続きを進めることが大切です。ここでは、被害を最小限に抑えるための基本的な流れをステップ形式でご説明します。
1.契約書と支払い方法を確認する
まず最初に行うべきことは、手元にある契約書や領収書・クレジット明細を確認することです。サロンとの施術契約書、信販会社との契約書、支払い方法の種別、残りの支払い回数や金額、施術済みの回数と残回数を把握してください。これらの情報が後の手続きのすべての基礎となります。書類が手元にない場合は、カード会社や信販会社に問い合わせて履歴を取り寄せましょう。
2.破産管財人に「債権届」を提出する
サロンが破産手続きを開始すると、裁判所が選任した破産管財人(弁護士)から通知が届くことがあります。通知が届いたら、指定された期日までに「債権届」を破産管財人に提出してください。これにより、未施術分の代金を「債権」として正式に申告することができます。ただし、一般消費者への配当が行われるかどうか、また金額がどの程度になるかは、破産財団の資産状況によって大きく異なります。
3.クレジット会社・信販会社へ支払停止の抗弁を申し立てる
分割払いやクレジット払いを利用していた場合は、速やかにクレジット会社または信販会社へ連絡し、「支払停止の抗弁書」を提出しましょう。支払いを自己判断で止めてしまうと延滞扱いになるため、必ず書面での手続きを経てください。多くのカード会社・信販会社は専用の申請書式を用意しているので、コールセンターへの問い合わせからスタートするとスムーズです。
4.消費生活センターや専門家に相談する
手続きが複雑でわからないことがある場合や、クレジット会社から支払い停止を認められない場合は、消費生活センター(消費者ホットライン:188)や法律の専門家(弁護士)に相談することを強くおすすめします。川崎市や埼玉県をはじめ各地の消費生活センターでは、こうした相談事例を多数受け付けており、具体的なアドバイスを無料で受けることができます。一人で抱え込まず、まず専門機関へ相談することが解決への近道です。
脱毛サロン破産のトラブルを未然に防ぐ方法

被害を受けてから動くよりも、そもそも被害に遭わないようにすることが最善の策です。脱毛サロンを選ぶ前に、いくつかのポイントを押さえておくだけで、リスクを大幅に減らすことができます。ここでは、契約前に実践できる具体的な予防策をご紹介します。
契約前に確認しておくべきポイント
サロンと契約を結ぶ際には、以下の点を必ず確認するようにしましょう。
- 中途解約時の返金条件が契約書に明記されているか
- 「前払金保証制度」などの消費者保護の仕組みが整備されているか
- 口コミや評判、運営会社の実績・安定性を事前に調べているか
- 「回数無制限」「通い放題」などの表現について、有償期間と無償期間の区別を理解しているか
- 解約・退会手続きの方法と連絡先が明示されているか
高額な一括払いを求められたり、「今日だけのキャンペーン」と急かされたりする場合は特に注意が必要です。不安を感じたらその場でサインせず、持ち帰って冷静に検討する習慣をつけましょう。
支払い方法ごとのリスクを理解しておく
実はサロン選びと同じくらい重要なのが支払い方法の選択です。いざというときの回収可能性は、どのように代金を支払ったかによって大きく変わります。
リスクを抑えるなら都度払いにするのがおすすめ
最もリスクが低い支払い方法が、施術1回ごとに代金を支払う「都度払い」です。サロンが倒産したとしても、前払い分がないためローンの支払いが残るリスクがありません。また、効果を確認しながら続けるかどうかを判断できるため、消費者にとっておすすめの選択肢といえるでしょう。
クレジットカード払いの活用
都度払いが難しい場合でも、現金での一括払いではなくクレジットカード払いを選ぶことで、万が一の際に「支払停止の抗弁」という手段が使えるようになります。現金支払いに比べて返金交渉の余地が残るため、同じ金額を支払う場合でも保護の度合いが異なります。決して「ローンを組むことが悪い」というわけではありませんが、仕組みを正しく理解したうえで、最適な方法を選ぶことが大切です。
サロン倒産時のローンについてよくある質問
サロン倒産時のローンについてよくある質問に回答します。
Q. サロンが倒産したらすぐにローンの支払いを止めてもいいですか?
支払いを自己判断で止めることは延滞・滞納の扱いとなり、信用情報に影響する可能性があります。まず契約中のクレジット会社や信販会社に連絡を取り、「支払停止の抗弁書」の提出という正規の手続きを経て対応してください。
Q. 現金で一括払いした場合に返金を受けることはできませんか?
現金一括払いの場合、サロンへの直接返金は倒産後には原則できません。破産管財人への「債権届」を提出して清算配当を待つことになりますが、配当が受けられない、あるいはごく一部にとどまるケースが多いのが現状です。消費生活センターに相談し、対応できる手段がないか確認してみましょう。
Q. 破産管財人からの通知が届いていませんがどうすればよいですか?
通知が届いていない場合でも、サロンの公式サイトや弁護士事務所のホームページ、裁判所の官報などで破産手続きに関する情報が公告されることがあります。また、消費生活センターや弁護士に相談することで、債権届の提出先や手続き方法を案内してもらえます。
Q. 消費生活センターに相談するにはどうすればよいですか?
「消費者ホットライン」の番号188(いやや)に電話することで、お近くの消費生活センターにつながります。無料で相談できますので、トラブルに気づいた時点でまず電話してみてください。
Q. 「支払停止の抗弁」は誰でも使えますか?
割賦販売法に基づく支払停止の抗弁が認められるのは、主に「支払い期間が2か月超・割賦販売価格4万円以上の分割払い契約」が対象です。翌月一括払いの場合は認められないケースもありますが、カード会社によっては柔軟に対応することもあります。詳細は契約先の会社に直接確認してください。
サロン倒産時の正しいローンの取り扱いについて知っておこう
脱毛サロンの破産・倒産は、かつては特定のサロンに限った話でしたが、今や業界全体の課題として広がっています。サロンが破産してもローンは自動的に止まらず、支払い方法によって対応の幅が大きく変わるという事実を、多くの消費者がまだ知らないままでいます。
被害に遭ってしまった場合は、まず契約書と支払い方法を確認し、クレジット会社・信販会社への支払停止申し立てと、破産管財人への債権届出という2つの手続きを速やかに行うことが重要です。そして、わからないことがあれば消費者ホットライン(188)に相談することをためらわないでください。
一方で、こうしたリスクを未然に防ぐためには、サロン選びの段階から慎重な判断が求められます。都度払いやクレジットカード払いを選ぶこと、契約前に返金条件や消費者保護の仕組みをしっかり確認することが、自分自身の財産と権利を守ることにつながります。
脱毛は長期にわたる施術です。信頼できるサロンを見極め、安心して通い続けられる環境を選ぶことが、何よりも大切なことといえるでしょう。

