
エステサロンの売上において、物販が占める割合は約3割だと言われています。物販による売上をアップさせることができれば、サロン全体の利益をぐんと伸ばすことも可能です。
エステサロンで物販を成功させるためには、商材の選定にこだわったり商品のメリットを自然な流れで伝えたりすることで、お客様の購買意欲をうまく引き出す必要があります。
今回のコラムでは、エステサロンの経営に不可欠とも言える「物販」を成功させるためのポイントを解説していきます。

エステサロンの物販とは?基本的な仕組みと売上への影響
エステサロンの物販とは、施術と併せて化粧品やサプリメント等の商品を販売することです。物販売上は施術売上と異なり、在庫管理や仕入れが必要ですが、適切に運用すれば安定した収益源となります。
エステ物販の基本的な仕組み
エステ物販は、お客様が施術を受ける際に、その効果を持続させるためのホームケア商品や、美容に関連する商品を提案・販売する仕組みです。一般的な物販の流れは以下の通りです。
- 商品の仕入れ:メーカーや卸業者から商品を購入
- 在庫管理:適切な在庫量を維持し、品質管理を行う
- カウンセリング:お客様の悩みや肌質に合わせた商品提案
- 販売・アフターフォロー:商品説明と使用方法の指導
物販が売上に与える具体的な影響
サロン物販の売上への影響は想像以上に大きく、イメージとしては以下のような効果が期待できます。
- 施術のみの場合:月売上50万円
- 物販導入後:施術売上50万円 + 物販売上15万円 = 合計65万円(30%アップ)
物販商品の利益率は一般的に30~50%と高く、施術の利益率(20-30%)を大きく上回ります。そのため、売上に占める物販の割合が増えるほど、サロン全体の利益率が向上します。
施術売上との違いとメリット
項目 | 施術売上 | 物販売上 |
---|---|---|
時間制約 | スタッフの稼働時間に依存 | 時間に関係なく販売可能 |
利益率 | 15~20% | 30~50% |
継続性 | 来店時のみ | 日常的な使用で継続購入 |
原価 | 施術者の人件費が必要 | 仕入れ費と販売時の説明のみ |
エステサロンにおける物販は、単なる追加収入ではなく、お客様の美容効果を高めながらサロンの収益基盤を強化する重要な要素なのです。適切な商品選定と販売手法により、サロン経営の安定性と成長性を同時に実現できます。
エステサロンで物販を取り入れるメリット
エステサロンにおいて物販を取り入れるメリットとしては、以下の5点が挙げられます。
- 客単価をアップさせられる
- サロンの売上を安定させられる
- サロンを開業した直後でも始めやすい
- 競合との差別化を図れる
- スタッフの負担が発生しない売上を作れる
客単価をアップさせられる
エステサロンで施術を通して客単価をアップさせるためには、施術価格を上げたり追加で来店してもらう必要があります。しかし、施術料金の値上げは既存のお客様が離れてしまうリスクをはらんでおり、高額な施術を追加で受けてもらうのも決して簡単ではありません。
エステサロンの物販で取り扱われることの多い美容製品は、施術料金に比べるとリーズナブルな価格で販売されることがほとんどです。施術を受けるついでに手軽に商品を購入できるため、客単価が上がりやすくなります。
基礎化粧品やサプリメントといった継続して使用できる商品を取り入れると、定期的に購入してくれる可能性が高まります。サロンに大きな利益をもたらしてくれる優良顧客の増加も期待できるでしょう。
例えば、8,000円の施術に2,000円の基礎化粧品を追加販売することで、客単価は25%アップします。月間100名のお客様がいれば、物販だけで月20万円の売上増加が見込めます。
サロンの売上を安定させられる
エステサロンの施術による売上は、スタッフの時間労働に大きく依存しています。スタッフの急な欠勤や退職が発生すると施術を行うことができず、売上に大きな影響が及ぶでしょう。
販売手続きを行う人材さえ揃っていれば売上を獲得できる物販は、スタッフの労働時間に左右されることはほとんどなく、サロンの経営を安定させることができます。
普段のサロン経営がどれだけ順調でも、景気の急激な悪化や災害といった不測の事態で休業を余儀なくされる可能性はゼロではありません。物販は、施術ができなくてもある程度の売上を確保することが可能です。
サロンを開業した直後でも始めやすい
エステサロンを開業した直後は、スタッフに施術スキルやサロンワークなどについて教育しながら経営しなければならない場合も少なくないようです。1日に受け入れる客数を増やせず、施術だけでは十分な売上を確保できないかもしれません。
- 商品が効果を発揮する仕組み
- どのようなお客様に勧めたい商品か
- 使用時の注意点
物販は、担当スタッフが上記のような情報さえ把握していれば、すぐにでも本格的に始めることができます。美容のプロであるエステティシャンに商品を勧められれば、お客様の購買意欲も向上するでしょう。
物販を導入することで、開業したばかりでもサロンの経営を軌道に乗せられる可能性が高くなります。
スタッフの負担が発生しない売上を作れる
お客様を施術することによって得られる売上は、スタッフが稼働できる時間に依存します。人件費を考慮すると、1つの店舗で採用できるスタッフの人数や労働時間は無制限ではありません。効率良く施術を行って回転率をアップさせても、1日に施術できるお客様の人数には限りがあります。
物販を取り入れれば、時間に関係なく売上を生み出すことが可能です。人気の高い商品を積極的に取り入れたり、サロン専売品のファンを作ったりすれば、物販を売上の柱の1つとすることもできるでしょう。
エステサロン物販の仕入れ方法と選び方のポイント
物販成功の鍵は適切な商品仕入れにあります。メーカー直接取引、卸業者経由、ドロップシッピングなど、効果的な仕入れ方法をご紹介します。
メーカー直接取引での仕入れ
化粧品メーカーや健康食品メーカーと直接契約する方法で、最も利益率が高い仕入れが可能です。仕入れ価格は通常よりも40~50%OFFとなり、商品知識やマーケティング支援も受けられます。
ただし、最小発注数量が多く初回50万円以上の投資が必要な場合もあるため、ある程度の資金力が求められます。小規模サロンは卸業者との取引で実績を積んでから移行することをおすすめします。
卸業者を通じた仕入れ
最も一般的で小規模サロンでも始めやすい方法です。初回仕入れ金額は3~10万円程度から可能で、豊富な商品ラインナップから選択できます。
支払い条件は月末締め翌月末払いが一般的です。担当者との関係構築により、商品アドバイスや新商品情報を得ることができます。
ドロップシッピングサービスの活用
在庫を持たずに物販を行える方法で、初期投資とリスクを最小限に抑えられます。利益率は20-30%程度と低めですが、在庫リスクがないため安心して始められます。
商品の実物確認が困難で発送タイミングのコントロールが難しいため、お客様への説明責任をしっかり果たす必要があります。
エステサロンで物販を実施する際の注意点
エステサロンに安定した利益をもたらしてくれる物販ですが、以下のようなデメリットに注意する必要があります。
- 仕入れてから利益を得るまでに時間差がある
- こまめに在庫を管理する必要がある
仕入れてから利益を得るまでに時間差がある
物販において仕入れた商品は、必ずしもすぐに売れるわけではありません。商品を仕入れるのにかかった費用をいつまでも回収できないといった事態も当然起こり得ます。商品の売れ行きが悪ければ、赤字の状態が続く可能性もあるという点に留意しておきましょう。
こまめに在庫を管理する必要がある
エステサロンで販売する商品は、店内の限られた空きスペースに収納することが一般的です。化粧品やサプリメントなど、製造日から一定の期間が経過すると販売できなくなってしまう商品もあります。そのため、物販では在庫を適切に管理することが欠かせません。
在庫管理がいい加減だと、売れ行きの良い商品が不足して本来得られるはずの利益が失われたり、人気のない商品が大量に売れ残って仕入れ代を回収できないこともあります。サロン全体の利益率に影響が及びかねません。
在庫を適切な量に保つためにExcelを使用する、こまめに点検するといった工夫を取り入れることをおすすめします。また、一度に少量で発注できる商材を選ぶと、仕入れる量を細かく調整できるでしょう。
エステサロンで物販の売上を伸ばすコツ
エステサロンにおける物販の売上を伸ばすには、どういった対策を講じれば良いのでしょうか。販促効果を高める方法を中心に、7つのコツをご紹介していきます。
- 商材の仕入れにこだわる
- 商品の認知度を高める
- お客様への伝え方を工夫する
- スタッフにインセンティブを設ける
- お客様へのアフターフォローを実施する
- 商品の使い心地を試してもらう
- ECサイトを開設する
商材の仕入れにこだわる
きれいになりたいという思いでエステサロンを訪れるお客様は美意識が高く、美容グッズについても肌との相性や効果にこだわって選ぶ方が多いと考えられます。
お客様に購入したいと思ってもらうためには、使用するメリットの大きい商材を選ばなければなりません。手間を惜しまず、本当に「使用する価値がある」ことを自ら確かめた上で商材を選びましょう。
仕入れる費用がサロンの負担にならないか、想定される販売価格がお客様にとって抵抗のない範囲であるかについても考慮しなければなりません。
質と価格のバランスや、安定して継続的に仕入れられるかを十分に検討した上で商材を選定することが大切です。
商品の認知度を高める
いくら質の高い商材を入手しても、お客様に認知してもらえなければ購入してもらえず、売上には繋がりません。商品の認知度を向上させることが必須であり、販売スタッフには商品に関する深い知識、お客様を納得させるクロージング力が求められます。
- カウンセリングやお会計のタイミングで自然に言及する
- カウンセリングでヒアリングしたお客様の悩みに応じて商品を勧める
- テスターを設けて使用感を体験してもらう
具体的には、上記のようなポイントを意識したクロージングを心掛けましょう。また、商材に関する情報のインプットやスタッフ同士のロールプレイングを積極的に実施してスタッフのスキルアップに取り組むことをおすすめします。
サロンを訪れるお客様の本来の目的は施術を受けることであり、関係ない商品について長々と説明されることを良く思わない方もいるでしょう。
しつこい勧誘はお客様が来店を辞めてしまう、ネガティブな口コミが投稿されてサロンの信頼が失われるといった事態に繋がりかねません。待合室や受付にPOPを設置すると、スタッフからアクションを起こすことなく商品について訴求できるでしょう。
スタッフにインセンティブを設ける
担当者のクロージング力が向上すれば、物販の売上は大きく改善する可能性が高いです。スタッフのモチベーションを高めるために、売上に対するインセンティブを設けることをおすすめします。
スタッフが積極的に接客スキルを高めてくれれば、商品の魅力がよりお客様に伝わるようになり、購入数の増加が期待できます。スタッフが意欲的に取り組んでくれることで、サロン全体の活気も良くなるでしょう。
お客様へのアフターフォローを実施する
基礎化粧品やサプリメントといった商品を継続的に購入してもらうためには、1度購入してくれたお客様へのアフターフォローを実施することも大切です。
商品が肌に合っているか、使用方法に関して困っていることはないかなど、サロンに来店してくれるタイミングでこまめに声掛けをしましょう。お客様が自分の肌に合わないと感じているのであれば、別の商品を勧めてみても良いかもしれません。
商品の使い心地を試してもらう
エステサロンの物販を初めて購入する場合、自分が現在使用している別の美容グッズから乗り換えることになるため、慎重になる傾向にあります。購入の決め手を提供するため、使い心地を一度試してもらうことをおすすめします。
来店してくれたお客様に試供品を配布したり、商品に興味を持ってくれたお客様に商品を店頭で使ってもらったりするのが良いでしょう。
ECサイトを開設する
ECサイトを開設して美容グッズを販売することで、物販による利益をさらに拡大することができます。
新しくサイトを開設すると聞くと、専門的な知識が必要、難しそうといったイメージを抱く方も多いかもしれません。しかし、近年はECサイトを簡単に作れる専用ツールが多数リリースされています。
店頭だけでなくECサイトでも商品を販売すれば、店舗が営業していない期間が発生しても売上を獲得することができます。また、ECサイトをきっかけとしてエステサロンに興味を持ってもらえる可能性があるのも嬉しいメリットだと言えます。
エステサロンの物販におすすめのアイテム
エステサロンを訪れるお客様の興味を集められる商材として、以下のようなアイテムを取り入れると良いです。
- 基礎化粧品
- 美容ドリンク・サプリメント
- 美容機器
- フェムケアアイテム
- フレグランスアイテム
基礎化粧品は以下のように多岐に渡ります。お客様の肌悩みをヒアリングしてそれらに応じた商品をおすすめすると、より購入に繋がりやすいでしょう。
- 化粧水・乳液
- 洗顔・クレンジング
- 日焼け止め
基礎化粧品や美容ドリンク、サプリメントはリピートされやすく、長期的に売上に貢献してくれる可能性が高いアイテムです。脱毛器や美顔器、ドライヤーといった単価の高い美容機器は、販売数が少なくても売上に大きく貢献してくれます。
近年注目されている、女性のデリケートゾーンのケアをサポートするフェムケアアイテムや、サロンの非日常空間を自宅でも演出できるフレグランスアイテムを取り入れるのもおすすめです。
エステサロン物販のよくある質問
エステサロンで物販を始める際によく寄せられる質問にお答えします。これから物販導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Q:物販の仕入れ資金はどのくらい必要?
初期投資として10~20万円程度から始められます。
小規模なエステサロンであれば、10万円程度の初期投資で物販をスタートできます。この金額で基礎化粧品3-4アイテム、美容サプリ2-3種類程度の在庫を確保可能です。売上が安定してきたら段階的に商品数を増やしていくことをおすすめします。
10万円の予算では基礎化粧品セットとサプリメント1種類、15万円あればホームケア用品2種類も追加でき、20万円まで予算があれば美容機器1点と季節限定商品まで仕入れることができます。
Q:どんな商品が売れやすい?
基礎化粧品、美容サプリ、ホームケア用品が定番です。
最も売れやすいのは基礎化粧品です。クレンジングや洗顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、日焼け止めなどの日常使いできる商品は継続購入率が高く、安定した売上につながります。
美容サプリメントは売上構成比30-35%程度を占め、コラーゲンやヒアルロン酸系、ビタミンC・E配合、酵素や乳酸菌系、美白・抗酸化系のサプリメントが人気です。ホームケア用品は売上構成比15-20%で、フェイスマスクやパック、美顔器、マッサージオイル、入浴剤などが定番商品となっています。
Q: 物販で月にどのくらい売上が上がる?
平均的なサロンで月10~30万円、成功しているサロンでは50万円以上の売上を達成しています。
開始から3ヶ月程度は月5~10万円程度の売上からスタートし、軌道に乗ってくると月15~25万円の売上が期待できます。
例えば、1日5名の施術を行うサロンで、そのうち2名のお客様に平均3,000円の商品を販売できれば、月18万円の物販売上となります。売上は施術客数、客単価、商品提案スキルによって大きく変動するため、継続的なスキル向上が重要です。
Q:お客様に商品を売るのが苦手ですが、どうすれば?
「販売」ではなく「お客様の悩み解決の提案」として考えることが重要です。
施術中の自然な会話で「ご自宅ではどんなケアをされていますか?」とお客様のニーズを把握し、悩みに共感することから始めましょう。「その悩み、よくわかります」と共感を示した上で、「こちらの商品がお役に立てると思います」と解決策として商品を提案します。
重要なのは押し売りしないことです。「ご検討いただければと思います」と伝えて、お客様に選択の余地を残すことで、信頼関係を維持しながら自然な販売につなげることができます。
Q:返品やクレームがあった場合はどう対応する?
事前にルールを決めておき、誠実に対応することが大切です。
未開封商品の場合は購入から1週間以内の返品を可能とし、肌に合わない場合は使用開始から3日以内は返品対応するなど、明確なルールを設定しておきましょう。初期不良については即座に交換対応し、クレーム時はまず謝罪してから原因を確認し、適切な対応策を提示することが重要です。
トラブルを未然に防ぐためには、商品説明時に使用方法や注意点を丁寧に説明することも大切です。お客様が安心して商品を購入できる環境を整えることで、リピート購入にもつながります。
Q:競合サロンと商品が被った場合はどうする?
商品の組み合わせ方や提案方法で差別化を図りましょう。
同じ商品を扱っていても、セット販売での独自性を出したり、使用方法の詳しい指導を行ったり、アフターフォローを充実させることで差別化が可能です。お客様一人ひとりに合わせたカスタマイズ提案や定期購入特典の設定なども効果的です。
商品そのものが同じでも、サロンの特色やサービスの質、スタッフの専門知識によって十分な差別化を図ることができます。お客様との信頼関係を深めることが、最も重要な差別化要素となります。
商品や戦略を工夫して物販の売上を伸ばそう
エステサロンで物販による売上を伸ばすコツや、おすすめのアイテムについてご紹介してきました。物販では施術やカウンセリングと同様に、お客様の悩みに寄り添って商品をおすすめしたり、お客様の反応を観察しながらクロージングを行うことが求められます。
エステサロンのオーナーの中には、物販に対して苦手意識のある方もいるかもしれません。しかし、コツを掴むことができれば効率良く売上をアップさせることが可能です。今回ご紹介したポイントを押さえて、物販を成功させてみてください。
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